【'04年賀状 by seaサマ】
 

 

  
はじまりは・・・





「すごい人だったねー。」
「ったく…願いごとをするにも大変だぜ。」

初詣でからの帰り道。
チャイナ服を脱いでいつもと違ったいでたちの乱馬と、艶やかな着物姿のあかねが並んで歩いている。

「1年最初だもん、余計に気合が入るのよ。」
「そういうもんかー?…それにしても腹減った…。」
「あんたって、元旦から食べ物の話ばかりよね。あれだけ屋台で食べておいて…。願いごとも食べ物のことじゃないの?」
あかねが呆れたように言うと、負けじと乱馬もあかねに返す。
「そういうあかねは色気が出るように、ってちゃんと願ったか?」
「なっ!失礼ね!!あたしだって色気の1つや2つ…」
「ほーーっ。じゃーその色気見せてみろよ。」
「んですってーーー!大学生になって"大人っぽくなった"て言われるんだから!鈍感なあんたになんか判らないでしょうけどね!」
「大学生イコール大人かよ!ったくオコチャマ発想だなー。」
「オコチャマはあんたよ!大学生にもなって相変わらず落ち着きないくせに!」
「なっ…なんだと!」
「なによ!」
きっ!
睨みあっている二人は、言葉から何となく判るように、高校を卒業し、晴れて大学生となっていた。
にも関わらず、喧嘩の程度は変わっていない。


しばし睨み合っていると……

「乱馬くん、あかねちゃん新年早々仲良しだねーーっ!」
「いやー羨ましい〜!」

天道家近くまで、戻ってきていることに気づいていなかったのか、二人が道の真ん中で言い合いをしているところに、ご近所のちゃちゃが入った。

「ご両親公認だとはいえ、見せ付けられたらこまるよ!」
「本当に仲睦まじいことで…。」
「目立つんだから気をつけなよ!」

ご近所さんの声に、すれ違い道行く人々にもくすくす笑われていた。

「「あ゛…あはは」」
ご近所さんの声ですっかり喧嘩の意欲をそがれた二人。
これ以上かわかわれないようにと、その場から足早に立ち去った。





道端でちゃちゃを入れられたこと以外、特にアクシデントもなく、すんなり天道家へ戻ってきた二人。
「「ただいまーー!」」
玄関で二人揃って元気よく声をかけたが、何も返事はなく、天道家は静まりかえっていた。
「あれ?みんな出かけてんのか?」
「そうみたいね。みんなも初詣に出かけたんじゃない?」
二人揃って履物を脱いで、家にあがる。
居間を覗いてみても誰もおらず、がらんとしている。
あかねはふと台所へ言ってみると何かを見つけたのか、乱馬に声をかけようとした。
「あ、乱馬、かす…」
「あ〜ぁ、腹減ってるのに、かすみさんいねーのか…しばらく飯はおあずけか…。」
が、あかねの言葉は遮られ、更にあからさまにがっかりした乱馬の言葉と表情にムッとした。
「ちょっと……あたしがいるでしょ!何であたしに"作って"って言ってくれないのよ!」
じろっと睨みながら、台所から居間へ戻ってくるあかね。
「おまっ…正月早々、俺の腹を壊すつもりか!?」
そんなあかねを恐れることもなく、思わず乱馬は本音が出てしまっていた。

−ばきっ!どかっ!

「着替えたら居間に来なさいね。かすみおねーちゃん、おしるこ用意してくれてるみたいだから。」
あかねは艶やかな姿で乱馬を叩きのめすと、そう言って二階へ上がっていった。

「あ…あるなら…早く言えよ……。ったく今年もなぐられる一年になるのかよ。」
聞かずに口走っていたので自業自得なのだが…よれよれになりながら、乱馬も着替えのために二階に上がって行った。

あかねの手からひらりと落ちた紙には
"みんなで初詣に行ってきます。おしるこ食べて待っていてね。 かすみ"
と書いてあった。





「はい。乱馬!」
「おー美味そう!さんきゅ。」
こたつでTVを見ていた乱馬に暖めたおしるこを渡すあかね。
いつまでも怒りを引っ張っていない点は成長したのかもしれない。
「本当ならまずお節なんだろうけどね…。」
そう言いながら乱馬の向かいに座って自分のおしるこを食べ始めるあかね。
すっかり二人は動きやすい姿に着替えて、おしるこをほおばりながら、TVを見ていた。
「ま、いいんじゃねーの?誰も揃ってねーのに、勝手に食べるのもな。」
テーブルには、お節のお重がズラリと並んでおり、食べる準備は万端で、あとは家族の帰りを待つだけになっている。
「あたしも手伝ったんだから、しっかり食べてね。」
「げ…そういえば…」
年末から何やらごそごそしていたのは見たが、すっかり忘れていた乱馬。
どのお重がアタリなのか、思わずお重を見比べ、冷や汗が出る。
「…乱馬くん…今、何考えてるの?」
あかねの鋭い眼光に思わず根負けする。
「え゛っ……い、いえ…楽しみにしてます…。」
「でしょ?」
そう言うと、満足気に再びおしるこをほおばり始めた。




「おせーな、みんな。」
「そうね…」
おしるこも食べ終わり、お笑い番組などを見ながら、ゆったりと過ごしている二人。
どたばたとしている家も、二人きりならなんとも静か。
誰もいないという開放感から思わず乱馬はあかねに触れたくなる。
「…あかね。」
そう囁いて手を伸ばそうとした瞬間、
「あ!そうそう年賀状わけなくっちゃ!!」
ふいにあかねは立ち上がった。
余りのタイミングの良さに、呆然とする乱馬。
「…?どうしたの?」
そんな表情の乱馬にあかねは、あっけらかんとそう言いのける。
「イエ、ベツニ…。」
「変な乱馬!」
あかねの鈍さにがっかりする乱馬だが、それに気づいているのかいないのか、あかねは帰ってきた時に一緒に持ってきた年賀状をそそくさと広げた。
「すごい量!見るの楽しみね!えーっと…これはお父さん、これはなびきおねーちゃんでしょ…」
うきうきと、家族の分を仕訳けるあかね。
「毎年毎年、書く量増えて、めんどくせーだけじゃねーか…。何が楽しいんだよ。」
触れることより…二人っきりだという状況下よりも、年賀状を思い浮かべたあかねにムッとしながらその姿を見るワガママな乱馬。
「近況報告とか読むのがいいの!あんたって本当にモノグサなんだからー。」
「んだよ、ちゃんと書いただろー。」
「でもあたしが言わなきゃ書かなかったでしょ?」
「う……うるせーな!」
あかねに毎年書きなさいと言われ続け、何とか書くようにして来た年賀状。
天道家に来るまでは、無いに等しい行事だったために、乱馬にとっては面倒くさいだけのもの。
「ったく…」
そう言って、あかねが振り分けている中、自分宛の年賀状を一枚取り上げた。

"あかねの尻にしかれるなよーー!(ある意味羨ましいがな)"

「ぶっ!」
目に入って来た文字に思わずこける。
誰からかと思って宛名を見れば、高校時代の友人ひろしから。
二人の関係を知っている一部の人間はすぐに、こういう風にからかいたがる。
「何?何て書いてあるの?」
乱馬がこけているのを見て、あかねは手を止めた。
「い、いいだろ別に!」
「何よ…まさか女の子からの!?」
「ち、ちげーよ!」
「じゃー見せてよ!」
「あ、あとで!いいからさっさと分けろよ。」
「怪しいわね!」
「ばーーっか!ひろしからだよっ。また俺たちをからかってんだ!」
「えっ!?……まさか…さゆりやゆかたちの年賀状もそうなのかしら…。」
「かもな。ったく、みんなより先に仕訳け出来て良かったな。」
触れることよりも、こっちを優先して良かったとふと思う乱馬。
「ほ、本当ね……。」
二人は顔を見合わせると深いため息をついた。

「そういえば去年はひでー目にあったな…。なびきのせいで。」
そう言って苦笑いする乱馬にあかねも答える。
「本当よね…全く妹を何だと思ってるのかしら…」
「あいつは金のためなら家族をも…」
「…とは思いたくないけど…去年ばかりはおねーちゃんを信じられなくなりそうだったわ。」
「あんな写真……年賀状に使うなんてなぁ。」
そういうと再び二人は深いため息ついた。

二人の言う、あんな写真とは、乱馬とあかねのキスシーンだった。
昨年、なびきは関係者(?)用に特別な年賀状を製作していており、その年賀状にはそのショットが見事プリントされていた。
しかも一部には1000円で売りつけようとしていたという、悪質さ。
(その事件は→コチラ←に参照(笑))
そんな写真をばら撒かれた日には、大変な騒動が待ち受けていると容易に想像出来るので、結局その年賀状は乱馬とあかねで、ネガや元画像、全て込みで3万円で買い取って、被害を最小限にとどめることに成功した。
最小限…といっても一部の人間と、高校時代の悪友4人組、大介、ひろし、ゆか、さゆりにはしっかりバレて、散々からかわれていたが。
とりあえず、一番の問題、家族に配られなかっただけでも、安心していた。



「あれって…初めての…だったのにね。」
「どこで嗅ぎつけてくるのか恐ろしいぜ…なびきは。」
「でも、記念に…写真に残って、ちょっと嬉しかったけど。」
そう言うとあかねはちょっと照れ笑いをした。
「あ、あほっ!ナイーブな俺の一世一代の告白を全てなびきに見られたんだぞ!」
「ぷっ…良く言うわよ!どこにナイーブさなんかあるのよ。」
「う、うるせーな!とにかく折角のクリスマスの思い出が"なびき付"なんだぜ!」
そう言ってがっくりと肩を落とす乱馬。

その問題のキスシーンは、高校三年のクリスマスのものだった。
想いが通じ合って、初めて交わしたキスがなびきのファインダーに捕らえられてしまったのだから、たまったもんじゃない。
偶然なのか、何なのかは判らないが、当初はそれで思い出も半減した気になってしまった気がしていた。

あかねも同じ思いであったが、しかし実の姉の行為。
思わず悪い気がしてくる。
「ごめんね…おねーちゃんのせいで。」
「別におめーが悪いわけじゃねーだろ。被害は一緒だぜ。」
乱馬はそう言って笑うが、あかねの申し訳なさは消えない。
「でも…」
うつむき加減でそう言うあかねを見て、乱馬はあかねの腰に手を伸ばした。
「気にしてねー…よっ!」
そしてそう言うやいなや、あかねを自分の胸に引き寄せ、自分の太ももの上に座らせた。
「ちょっ…何!?」
突然の行動に、あわてるあかね。
「ん、いや……あかねがなぐさめてくれたら、なびきのこと許そうかな〜と思って。」
そういうと乱馬はニヤリと笑った。
「なっ…人が悪いと思って言ってあげたのに、ふざけて!その顔はなによ!この変態っ!」
「へ、変態とはなんだ!変態とは。抱きしめてるだけじゃねーか!」
はっきり言う乱馬にあかねは思わず真っ赤になる。
「な、何よ。あたしに色気がないっていうくせに。」
「冗談に決まってんだろっ?」
「ばっ…ばかっ!」
「なっ、ばかとはなんだっ!ばかとは!大事な思い出踏みにじられた気がしたのは本当だ!それにあかねが沈んだから、俺からもなぐさめようとしたんだぜー。」
その乱馬の言葉にあかねはぴたっと止まった。
「な、何だよ。」
「……何かイヤらしい……。」
「おめーな……。」
乱馬がジト目になっているのを見て、あかねはくすっと笑うと、乱馬の胸にちょこんと頭をおいた。
「乱馬…」
「…何だよ。」
ちょっとふてくされているのが益々おかしい。
「やっぱりごめんね。」
「だ、だから、もーいーって。」
乱馬はそう言うと、あかねをぎゅっと抱きしめた。


しばらくして、あかねが口を開いた。
「そういえば……ねぇ今年は大丈夫よね。」
「あぁ、多分な。」
「そっか…。じゃ…あの……そろそろ離して。」
みんなに見られたら、その思いが強いのか、そわそわし始めたあかね。
「いやだ。」
にっこり微笑んで拒否する乱馬。
「い、いやだって…あんたねぇ…みんな帰ってきたらどうするのよ!もうなぐさめたわよっ!」
「え?まだ足りないぜ。それに大丈夫だよ。」
そう言うと、あかねに向かって更に微笑んだ。
「だ、大丈夫って何の根拠があって…!っ……」



離れるとあかねはすぐに口を開いた。
「もう…乱馬っ、何考えているのよ!!」
「あかねのこと。折角の二人っきりの正月だから少しぐらいいいだろ?」
悪戯っぽい笑顔でそう言われて、あかねは何も言えなくなってしまった。
「ばか乱馬…。もうちょっとだけだからね!」


二人はこうしてあまーいお正月を、みんながどやどや帰って来るまですごすのであった。
そして家族のご帰還を、二人揃って出迎えたので、喧嘩せずにいたというだけで大満足している家族は、乱馬とあかねがあまーい時間を過ごしていたことなど気づかない。
ひとりを除いては……。





−そのひとり−
「大丈夫なわけないでしょ?ったく…相変わらず甘いわよね…隙だらけよお二人さんは。このショットも頂いちゃうわね。」

−カシャッ!

そこには去年以上に仲睦まじい写真がなびきの手によって納まった。
なびきは他の家族より一足先に天道家に着いていたのであった。
もちろん必然的に。


そして
「また記念が出来たわよ。」
と楽しげに、この写真と共に二人の前に現れるのはまた後日のこと。
この写真で、天道家での行動は、なびきにかかれば全て筒抜けになるという可能性があることを、一年の始まりに学んだ二人であった。
そして、絶対に"家ではいちゃつかない!"と心に決める二人でもあった。


しかし……
「さて…次のシャッターチャンスはいつかしら!」
家で二人っきりにされれば、そんな決意もたやすく破られるのが判りきっているなびきは、すでに次の機会を狙っているのであった。

「sea Side」のseaサマから頂きました。「また記念が出来たわよ。」のなびきおねーちゃんの言葉。これは昨年のお正月小説の時の事を指してらっしゃるんですよね!あの時もいいショットを見させて頂きましたv そして今回も撮られてしまう辺りなびきおねーちゃんはやっぱり一枚上手ですね。これに負けずにこれからも隙を見つけていちゃついて欲しいです(^^)あまーいお正月を過ごした2人v seaサマ、ありがとうございました!

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