【君の髪と僕の手と】
novel kasane illust kokemomo
下校途中で立ち寄った本屋。
あかねは買いたい雑誌があるとか言ってオレを付き合わせた。
別に用事があったわけじゃねーから、先に帰らず付き合ってやった。
…べ、別に、あかねと一緒に帰りたかったわけじゃねーからなっ。
そ、そこんとこ誤解するなよっ。
店内に入るや否や、オレとあかねはそれぞれの場所へ向かって別れた。
なぁに、お目当ての雑誌は決まってるわけだし、それほど時間も掛かんねーだろう。
…と思ったのが大間違いだったらしい。
10分経っても20分経ってもあいつは姿を現さない。
なにやってんだ?たかだか雑誌買うだけで…。
パラパラと捲っていた格闘雑誌にも飽きて、ウロウロと店内を歩き出す。
お、いたいた。
なに真剣に読んでんだ、あいつ。
何でもバカ正直に取り組むあかね。
それが勉強とか学校行事とかだったらいいんだろーけど、格闘にもその真っ直ぐな性格が表れる。
センスは悪かねーが、あれじゃ、オレ様から一本取るにはまだまだだ。
そんな「真面目なあかねちゃん」を見てたら、どーしよもねー悪戯心がオレを擽った。
そーっとあいつの背後に近づく。
け、け、け。驚かしてやるぜ。
子供っぽいと笑いたきゃ、笑えばいいさ。
オレはこいつをからかうのが堪らなく好きなんだ。
熱心に雑誌を読んでるあかねはオレの気配なんぞに気付きもしない。
ったく、それでもおめーは「武道家の端くれ」か?
…もっとも、念のため、気配を消しといたけどよ。
ん?
ははぁん…
どーりで熱心に読んでるわけだ。
あいつが見てたのは、「料理」の雑誌。
あんなに料理の本持ってんだろーが。
おふくろだって色々指南してるっつーのに。
なんで上達しねーんだよ…。
味見させられるこっちの身にもなってくれよ、頼むから…。
これから一生あの料理と付き合ってくのかと思うと、これからの人生が灰色…、いや、どす黒く見えてくる。
「?!」
あっ、いや、その、なんだ、「一生」っていうのは、その、つ、つまりだなぁ…///
…って、なに独りで焦ってんだよ、オレは。
あれ…?
あかねの真後ろに立ってたオレは、ふとあることに気が付いた。
―――あかねって、こんなに…
小さかったっけ…。
肩だって、こんなに華奢じゃねーか…。
首なんて、細っちくて、透き通るように白くて…。
それに…
気が付いたら、
そうしてた。
オレの指先が、あいつの髪先を、絡めてた。
柔らくて、しなやかで、いい香りがして…
少しの風でも揺れるくせに、
些細な雨でも濡れるくせに、
なんでだろうな。
そいつは、すげー芯が強いんだ。
何者にも屈しない、強さと、
何者にも穢せない、清楚さと。
けれども、たおやかで。
あかねみたいな、あかねの髪。
本当は脆くて、泣き虫で、
俺がいねーと駄目なのに、
なんでだろうな。
こいつは…
愛しくて、この手に包んでおきたくて、誰にも触らせたくなくて…
オレだけの…
「乱馬?」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「きゃぁっ」
「ちょっとっ!大きな声出さないでよっ。びっくりするじゃない!」
びっくりしたのはこっちのほうだっ!!
振り向くなら振り向くって言えっつーんだっ。この、ばかっ!
あ゛ーーーー、びっくりした…。
…と、今の、見られてねーよな///
周りを見てみたが、幸い、このコーナーにはオレたちだけだったみてーだ。
あ〜、良かった。
あんなの他人に見られたら…。
…あぶねー、あぶねー。
「お待たせ!さっ、帰ろう♪」
レジから戻ってきたあかねはにこにこ笑ってた。
なに上機嫌な顔してんだ。
…ま、まさか、さっきのバレてんじゃ…。
いや、だったら「このスケベっ!!」とか言って往復ビンタが飛んでくるよなぁ。
う゛〜ん…
なんでだ???
ヴィィィィン
どーでもいい理由を必死に考えてたら自動ドアが開いた。
前を歩いていたあかねのスカートが僅かに風を孕む。
「……。」
風が…
若草の匂いを含んだ風の手が
あかねの髪と戯れて、
名残惜しそうに、去っていった。
…その髪に、オレに負けないくらいの、優しい口付けを残して。
それから、あかねが上機嫌だった理由が分かるまで、それほど時間は掛からなかった。
食卓の上で、本屋で見つけた「新メニュー」が無残な姿でオレを待っていた。
かさねサマからから頂きました。このお話は当サイトにある日記にて、ちょうどキリイラで「手」を連想させている時に思い付いたシーンを描いたイラストを張り付けていたのです。それをご覧くださって、こんなステキなお話へと拡げて下さったんです〜!!最初は公開予定ではなかったのですが、私が「サイトに飾ってもいいですか!?」とほぼムリヤリお願いしたところ(エヘヘv)、公開OK用にと改めて書き直して下さったのです!!この時のあかねちゃんは本屋で料理本に夢中だったのですね〜vv このように自分が描いたイラストからお話を作り上げて下さると、もっといろんなイラストを描いてみたい!という意欲に駆られます。ムフv 乱馬くんの無意識によるかわいい行動v かさねサマ、ありがとうございました!
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