【星に願いを】
   *このお話の前作はコチラ!→ 『深紅のハート』

novel nya   illust kokemomo 

 

「ねえ、こんどはあれに乗ってみようよ。」
「いいけど・・・・。」
「あ、やだ。1時間待ちだって。どうしよう?」
「じゃ、やめるか?」
「う゛〜〜〜。やだ!待つ!!」
「・・・・・・ったく。遊びで来てんじゃねぇんだぞ?」
「わかってるわよ。でもせっかく来たんだから、少しぐらい楽しんだっていいでしょ。」
「へえへえ。」

 今日は12月24日。クリスマスイブ。俺とあかねは遊園地に来ていた。
 傍から見たらデート中のカップルに見えるんだろうけど、残念ながら俺達はデート中の恋人なんかじゃねえ。
 俺とあかねは仕事のでここに来ている。
 にしてもこいつのこのはしゃぎよう。ほんと子供みてえだ。
 ・・・・・・・・でも仕事抜きで連れて来てえな。そしたら俺も・・・・・。



「今回は、あたしがあんたに仕事の依頼をしたいの。」
 数日前そう言って俺の事務所を訪ねてきた情報屋。
「あんたからの依頼なんて珍しい事もあるもんだな。」
「まあね。今回はどうしてもあんたの銃の腕前が必要だから。」
「で?要件はなんだ?」
「実は・・・・・。」

 彼女の話を要約すると大体こうだ。
 来るイブの夜、遊園地で、カップルを対象としたイベントがある。
 そのイベントのメインとなるクリスマスツリーの天辺に飾られた『願い星』を撃ち落として欲しいと言うのだ。

「星だけをか?」
「そう。他の部分には一切傷を付けず星だけを撃ち落として欲しいの。」
「たかがツリーの飾りだろ?何でそんな物を?」
「ただの『ツリーの飾りのお星様』じゃないからよ。」
「どういう事だ?」
「今回のイベントを影で仕切っているのはある新興宗教で、あの星は特殊な電波を発するの。で、その電波により人は一種の催眠状態になり訳が分からないままお金を寄付することになるのよ。」
「だったらイベントそのものを出来なくなるようにするか、催眠商法みたいなもんだし警察の仕事なんじゃねえのか?」
「ところが警察を動かせるだけの証拠が揃わないのよ。それに揃ったとしても宗教団体から献金を受けている大物政治家の圧力によってもみ消されてしまうわ。」
「で、俺の所に来たってか。」
「まあね。」
「でも、催眠を失敗させるなら別に星を撃ち落とさなくたっていいんじゃねーか?」
「それだけが目的なら・・・・ね。」
「ほかに何かあるのか?」
「どうせやるなら大勢の目の前で失敗させてやりたいじゃない。」
「ま、たしかにそりゃ効果的だな。でもお前まるで個人的に恨みでもあるようだな?」
「いいじゃない、そんな事。それより引き受けてくれるんでしょ?」
「あ、ああ。」
「はい、じゃこれが会場の見取り図。この中央の広場にツリーがあるわ。」
「用意がいいな。」
「当然でしょ。あたしを誰だと思っているの。そしてこれがチケット。」
「2枚あるぞ?」
「あかねと行きなさいよ。カップル対象だし会場に入るなら二人連れの方が都合がいいでしょ?それともクリスマスの遊園地に男一人で居たい?」
「・・・・・・わかった・・・・・・。」



 で、俺は今こうしてあかねと問題の遊園地に居るって訳だ。
 会場の下見もあって早めに来たんだがすっかりあかねははしゃいじまってる。
 ま、かくいう俺も結構楽しませてもらっているが・・・・・。


 一通り乗りたい物に乗ってあかねもようやく落ちついたらしい。
「じゃ、イベント会場行って見ようよ。」


 遊園地中央のイベント広場には見事な巨大ツリーが立っていた。
 そしてその天辺に問題の星。
 まだ準備中ではあるが会場の中にはいる事が出来た。
 会場の四方にはこれまた大きなスピーカーが設置されている。情報によるとこのスピーカーの配置にも意味があるらしい。
 そしてそれらから延びるケーブルが会場脇の建物の中に延びている。あそこで操作を行うのだろう。
 そしてツリーのふもとがステージになっていた。


 さて問題はあの星を何処から狙うか、だ。
 丁度ツリーの正面には展望台があった。俺とあかねは展望室に昇って見た。
 展望室からのツリーの眺めはジツに丁度いい。て事はイベントの時間ここからツリーを眺める客が居ると言う事だ。
「ここからじゃ無理だな・・・・。」
 展望室をぐるりと廻ってみると化粧室の脇に非常階段へとつながるドアがあった。
 俺はノブを回して外に出た。下へ降りる非常階段と、上部に昇るための細い梯子があった。
 梯子を昇って展望室の上部に出るとツリーを狙うのには十分なスペースがそこにあった。

 展望室に戻るとあかねは楽しそうに望遠鏡を覗きこんでいた。
「子供みたいだな。」
「いいじゃない。いろんなものが見えて結構楽しいわよ。」
 そういって頬を膨らませるあかねはとてもこれがあの怪盗とは想像が付かない。



「へいへい。ほら、行くぞ。」
 あかねの頭をぽんぽんと軽く叩いてなだめ、俺達は展望台を後にした。


 イベントの開始時刻になった。俺は展望台へ向かうがあかねは会場へ行くと言う。
 確かにチケットさえ持っていれば一人でも中に入れる。
 そういえば、今回のあかねの役割はなんだろう。カップルのふりのためだけならわざわざ催眠にかかってしまう危険のある会場に入る必要は無い。
「おい、大丈夫か?」
「あの星を見つめなきゃいいんでしょ。それに、ほら。」
 あかねは何か小さな物を差し出した。
「耳栓?」
「うん。なびきお姉ちゃんが持って行きなさいって。」
 用意のいいこって・・・・・。やっぱり何かやる気なんだな。
「そっか。じゃ、気を付けろよ。でも、お前は何をするんだ?」
「それは後のお楽しみ。それより乱馬こそ外さないでね。」
「俺が外す訳ねえだろ。」
 そう言って俺たちはそれぞれの場所へ向かった。


 展望台は高くて寒くない所からツリーを眺めようという人でかなり混んでいた。
 当然それなりに化粧室への人の出入りもあり、俺はどうやって人目を避けて非常階段へ出ようかと思ったが、イベントが開始されると皆そちらの方に行って化粧室周辺は誰もいなくなった。
 俺は素早く非常階段へと抜け出た。
 幸い風は殆ど無く、こんな高い所でもあまり寒い思いはしなくですみそうだ。
 依頼の内容から言って、イベント終盤に来るであろうあの星の作動の時を狙うのか効果的だろう。
 それまでの暇つぶしにイベントの高見の見物も悪くないかもしれない。
 俺はタバコに火をつけた。


 イベントと言ってもそんなたいした事を行う訳ではなかった。
 クリスマスにちなんだ曲の演奏や簡単なゲームを行っていた。
 それでも会場のカップル達には楽しいものらしく時おり歓声が上がる。
「何も知らずにあかねとそこにいたら、俺も楽しんでいたのだろうか?」
 ふとそんな事を思って苦笑してしまった。
「でも催眠術にかかるのは御免だな。」

 いよいよあの星の出番なのだろうか。会場の照明が落とされ厳かな曲が流れ出す。
 音楽に合わせるように星はきらめき始めた。
「ツリーの星にご注目ください。皆さまの願いがかないますように、今宵ひときわその輝きを増します。」

 先ほどまでの騒がしさが嘘のように会場のカップル達は静まり返っている。
 ただ、不思議な旋律の曲だけが響いている。
 星は一層そのきらめきを増した。

「今だな。」
 俺は狙いを定めて引鉄を引いた。



 俺の撃った弾が命中した星は閃光と火花を散らし会場の向こう側にある池の方へと落ちていった。
 その様子はまるで本当に流れ星を見ている様であった。

 その時、会場のスピーカーからナレーションが聞こえてきた。
 先ほどまでとは違うその声はまるで聖母マリアのように優しさに満ちた声であった。

「今宵のあの流れ星に皆さまの願いが届きますように。」
 まるで予定通りと言うように落ち着いたその声はイベントの終了を告げた。
 夢見心地で会場を後にするカップル達。そしてそれを引きつった表情で、でも動揺を隠しながら見送る関係者達。


 俺はあかねと合流するために会場の出口に向かった。そこには澄ました顔で情報屋が立っていた。
「ご苦労様。うまくいったわね。」
「確かに今回はうまくいったが、これじゃあいつらまた同じような事するんじゃないのか?」
「いいのよ、これで。こんなのまだ序の口なんだから。」
「それ、どういう事だよ。まだ何かあんのか?」
「ふふっ、さあね。じゃ、あたしはこれで失礼するわ。後はおふたりごゆっくり。」



 そう言って情報屋は去っていった。

「乱馬。」
 振り返ると、あかねが立っていた。
「あ、あかね。大丈夫だったか?」
「うん。耳栓のお影で。仕事もうまくいったし。」
「で、何したんだ?」
「放送室に忍び込んで係りの人達に無理やり休憩を取ってもらったの。」
「それだけか?あの、最後のナレーションはお前じゃないよな?」
「うん。あれはかすみお姉ちゃん。」
「お前、もう一人お姉さんがいたのか?」
「言ってなかったっけ?あたし達3人姉妹だって。」
「・・・・聞いてねえ・・・・。」
「それよりご飯食べに行こう。お店予約してあるから。」
「予約?いつの間に。」
「なびきお姉ちゃんが今回の計画を立てたときに予約して置いてくれたの。ほら、今日はクリスマスイブでしょ?せっかくだからって。」
『あいつがここまでするなんて・・・・。こりゃ依頼料値切られるんだろうなあ。』
 そんな事を思いながら俺はあかねに連れられてレストランへと向かった。

 なんだか情報屋に目いっぱい嵌められてるような気がしないでも無いが、ま、いっか。料理は結構美味いし、何よりもこいつの笑顔がある。それになんといっても今夜はクリスマスイブだしな。

Nyaサマからから頂きました。「Sniper & Thief」「深紅のハート」から続いて3話目です〜!!前回偶然にも共通の仕事をしていた2人が今回はペアとなって遊園地に乗り込んできました。クリスマスイブですし周りはカップルばかりだし、乱馬くんも仕事どころじゃない心境だったと思いますが(笑)、やっぱりスナイパーとしての腕はお見事!! 謎の宗教団体を目の敵にしているなびきお姉ちゃんがとても恐いですが、かすみお姉ちゃんも登場して何やら不思議な3姉妹(^^) 乱馬くんが翻弄されそうな御3方ですね!

Nyaさんのお話、密かに続きを心待ちにしておりましたので今回もイメージイラを頑張ってみました。3枚ですが試し描きしている時に遊んだのがあったりして。
←コチラ

冒頭部分での乱馬くんの心境。
健康な青年ならこんな事とか考えているかもっ!なんて楽しんでしまいました。
Nyaさん、ごめんなさーい・・・(汗)

仕事だけどどこかデートしている感じの2人v
Nyaサマ、ありがとうございました!

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