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「並んだ〜、並んだ〜、赤、白、黄色…♪」
私の目の前には、立派に育ったチューリップが3本並んでる。
赤、白、黄色。童謡じゃないけど、どれも本当にキレイ。
……どたどたどたどたっ
「このやろっ…待ちやがれ親父〜〜〜!!!!」
「あ〜、美味しいこの玉子焼きっv」
「あ"〜〜、食うなぁ〜〜!!!」
「乱馬……あ、そうだこれかけとかなきゃっ!」
急いで手元にあったプラスチックの箱をそっと花の上に被せる。
ちゃんと空気の出入りができるように、穴も付いている。
「ごめんねー…、でもこれが無いときっと潰されちゃうから許してね?」
あかねは苦笑いしながら、花に話しかける。
それが朝食のおかずの争奪戦に決着がついた乱馬の目に、奇妙な光景として映った。
「…あかね、んなとこで何してんだ???」
「………花の防衛」
声の主に背を向けたまま返事を返す。
からかわれることが目に見えてわかったからである。
「ハナノボウエイ…?……なんだそりゃ?」
「……別になんでもないっ//」
「……教えてくれてもいいじゃねぇーか?」
「いいのっ!乱馬になんてどーせわかんないんだからっ」
「……なんだよそれっ」
背中越しでも、乱馬がむっとしたのが分かった。
乱馬に、私の気持ちなんて分かりっこない。
…どんなにこのチューリップが咲くのを楽しみにしてたかなんて。
乱馬は、"花より団子"に決まってる。あかねの頭にはそんな言葉が浮かんでいた。
黙ってしまったあかねに痺れを切らしたのか、
乱馬は、ゆっくり歩み寄ってきた。
そして、ひょいっとあかねの手元を覗こうとするが、
あかねが覆いかぶさるように箱を抱きしめているので、上手く見ることができない。
「なんで、隠すんだ?」
「やーよっ!!//」
「答えになってねーよ…見せろよ!」
「い〜〜やっっ」
「見せろ、こらっ……」
「あっっ…」
見せまいとがんばったものの、
乱馬の力には勝てるはずもなく手は難なく解かれてしまった。
「「………」」
一瞬の沈黙の後乱馬の口から出た言葉は、予想外なものだった。
「……これ、あんときの…」
「……え?乱馬覚えてるの……?」
「これ、あれだろ?冬に貰った球根…」
「う、うん…」
「やっぱり、そうか…すっげーな!ちゃんと育ってるじゃねーかvv
わりっ…俺全然世話してなかったけど、お前がしたのか?」
「うん、私とかすみお姉ちゃんで…」
「そっか…でも、よかったな。あんな球根でもこんなに立派に育ったじゃねーか」
「うんっ……」
***
−去年の12月12日の学校の帰り道
『あっ、あかねちゃん、おかえり〜』
『あ、花屋のおばちゃんただいまっ!わぁ〜…いつみてもキレイですねvね、乱馬?』
『あー、まーな…
ぐぅ〜〜……
あ……』
『……乱馬ったら、やっぱり、花より団子なのね!!はぁー、まったく嫌になっちゃうっ…』
「う、うるせー!夕飯時は腹が減るんだよ!!//』
呆れ顔の私とばつが悪そうにそっぽを向く乱馬をみかねたのか、おばちゃんが声をかけてくれた。
『まぁまぁお2人さん、機嫌直して。そうだ!いいものがあるよっv』
『…えっ?く、食い物かっ!?』
ゴンッ!
『痛っっ!!なんだよあかねのやろぉ……』
ぶつぶつ文句を言っている乱馬はほっといて…
『なに、なんですか!?』
『えっとねー、これよこれっv』
差し出されたのは、三つの球根。
『これ…チューリップの?』
『えー、なんか業者の方が余り物だから咲くかは分かんないけどよかったらって、
貰った物なんだけど…あかねちゃんいるかい?』
『え?頂けるんですか!?いりますっvv』
『そーかい?それはよかった!袋に入れたあげるから…そこで拗ねてる乱馬くんと、
一緒に植えなv』
おばちゃんは、店のドアによりかかってこっちをちらちらと伺っていた乱馬を見て、
笑いながらそう言った。
『うんっ!おばちゃんありがとーv』
『ふ、ふんっ…』
『あ、あかねちゃんチューリップの花言葉知ってるかい?』
『えっとー…なんでしたっけ?』
『色によっても違いはあるんだけどね、チューリップの全般の意味は、
"完全なる愛"…だよv』
『え……おばちゃん/////』
『はっはっはっ…2人で、頑張って育てんだよ!ほらっ、乱馬くんとっくに、行っちゃったよ!
咲いたら、あかねちゃんの口から教えてあげなv』
『もー、乱馬と私はそんなんじゃっっ!!///////』
『はいはい、じゃあ、分かんないことがあったら聞くんだよ〜』
『…はい///じゃあ、ありがとうございました!…ちょっと、待ってよ乱馬ぁ〜〜……』
***
「そーいや、お前なんか言ってたよなぁ?植える時…
『乱馬、もしねこの花がちゃんと咲いたら聞いて欲しいことが…』
って言ってなかったか?」
「ん?あっ、それは花言葉……あ…なんでもないっ!今のは違うのっ!///」
「花言葉…?ってか、なに焦ってんだおめー…??」
「あ、焦ってなんかないわよ!///」
と、言いながらも乱馬の視線に絶えられず、目線を逸らす。
「ふ〜ん……ま、いいけど」
いやに諦めがいいわね…?
いつもの乱馬ならもっと食い下がってくるはず…ってことは…
嫌な予感を感じつつも、きっ!…っと乱馬を睨む。
…が、当の本人は、花の囲いをとって割れ物を扱うように、
優しく花びらに触れているところだった。
「あっ…なんで外すのよ!?」
「なんでって、俺らが見てるんだから大丈夫だろ?窮屈だよなぁ…お前達も」
どき…っ
あんまりいとおしそうに花を見つめているもんだから、
怒っていることを一瞬忘れてしまった。
「…俺は、てっきりあかねから愛の告白でもされるのかと思ってたんだけどなぁ」
「…………」
今………なんて言いました……?
次の言葉で私の悪い予感が確かだと確信した。
「俺との"完全なる愛"を誓いたくて、こんなもん大事そうに育ててるのかと思ってたぜ」
今、確かに完全なる愛って確かに言ったわよね…
「あ、あ、あんた知ってたのね!!!」
「は?なんのことだか俺にはさっぱりわかんねーなぁ?」
「じゃ、じゃあなんで知ってるのよ!!チューリップの花・言・葉!
信じられないもぉ〜!!////」
球根を植えてから、一日も欠かさず愛情を込めて育ててきたあかね。
いくら花が好きだとしても、こんなに一生懸命世話をすれば誰もが不思議に思うはず。
そんなあかねの様子に気づかない訳がない許婚。
あかねがいないときこっそりと花屋を訪れたのだ。
***
『こんちわー』
『いらっしゃ〜い!…あら?乱馬くん珍しい〜あかねちゃんは一緒じゃないの?』
『まー、今日はちょっと。その、あかねのことなんですけど、この前貰った球根…』
『あー、チューリップの?ちゃんと育ってる?』
『あかねの奴が毎日世話してますから、それなりに…』
『そうっ、それはよかったv…あ、それで構って貰えなくて花にヤキモチ焼いてんだろ?』
『ち、違げーよ!でも、その世話の仕方が尋常じゃなくて…花に話しかけてんですよ!?』
『それは良いことじゃない!でも、よっぽど咲かせたいのねあかねちゃん…ふふふv』
『な、あれ咲かせたらそんなに良いことがあるんすか?』
『やっぱり、教えてもらってないんだ。…まぁ、教えてあげてもいいけど、
内緒だよ?あかねちゃんには』
『はいっ…え?………それであいつ……//』
***
「ばかばかばかっ!!知ってるなら、知ってるでなんで言ってくれなかったのよ!?/////」
恥ずかしさで真っ赤になりながらも、文句を言い続ける。
そうしてないと、素直に気持ち言っちゃいそうで怖かったから…。
「…だって、おまえ言ったら言ったでなぁ……ま、いーじゃねーか拗ねんなって!おらおら、
そんな膨れてると可愛くねーぞ〜?」
無意識に膨れていた私のほっぺたをぷにぷに突っついてくる乱馬の指。
「〜〜〜〜〜///」
何か言ってやりたいけど、言い返す言葉もでない。
できることと言えば、俯いて、不機嫌そうな顔を作ることだけ。
「ふー…いつまでもそーしとけよ…」
「………」
ゆっくり、立ち上がった乱馬の足音は小さくなっていく。
呆れちゃったかな、乱馬……だって、そんなに簡単に素直になれるわけないじゃない。
私は…シャンプーみたいに…右京みたいに…小太刀みたいに……
素直にできないもん!!!!!!
勢いよく立ち上がって、前を見据えて、
「…乱馬の馬鹿!!ずるい!!!」
ぴたっと乱馬の足が止まる。そして、やっと出てきた言葉がこれ。駄目だ…完璧に嫌われる。
そう分かってても、私の気持ちはおさまらなかった。
さっきと反対。今度は、乱馬が背中を向けてるから表情は、全く見えない。
「知ってたのに黙ってるなんて、卑怯じゃない!あたしはなんて言えばいいの!?
"そうだったの。乱馬のことが好きなのv"…とでも言えば、満足なの!?
あたしだって、乱馬の気持ちが知りたいわよ…」
勢いにまかせて思ってること全部叫んでしまった。
私、なんか今とんでもないこと言ってしまったような気が…
さぁーっと、血の気が引いていく。
「あ…の…ち、違うの!ご、ごめんなさい…忘れて…/////」
きゅっと、自分の服の裾を握り締めて俯く。
そのとき、気配で、乱馬がこっちに振り返ったことに気づいてさらに俯く。
「……あかね」
呟かれた乱馬の言葉は、今まで聞いたどんな言葉よりずっとずっと、優しく聞こえた。
その言葉に導かれるように、おずおずと顔をあげた。
「乱馬………?」
「……やーっと、あかねの顔見れたな」
「怒ってないの……?」
「怒るってなにを?…むしろ怒られるのは俺だって分かったしな。
わりかった、ちょっとからかいすぎた…」
「……え?」
「正直言うと、おめーが花大事そうに育ててんのみたら、
その花が、咲いたときの喜んだ顔見てみてーと思ったんだよっ!//」
「な、なによそれ!?別にそれなら、打ち明けてくれてもよかったんじゃないの!?///」
「おめー…言ってたらそんな風に笑ってたか?」
「どーゆー意味よ??」
「…あかねちゃんは、とてつもなく意地っ張りで、素直じゃなくて、可愛くねーってこと!!」
「☆△★□!?……なによそれ……馬鹿にしてんの!?//////」
「さぁーなっ…」
「なによもー……ふふっ…へーんな乱馬っ…」
「あ……やっと笑った…」
乱馬から無意識に呟かれた言葉に、
「え…?」
きょとんとするあかね。
「笑っちゃいけなかった…?」
「あ、いや、なんでも……」
「…なーんか、隠してない??」
「隠してなんかねーよ!ほ、ほらっ、あれだなっ…」
「なによ??」
「だから、そ、そーだ、あかねって、黄色いチューリップみてーだな…あ…」
また余計なことを言ってしまったと右手を口に咥え、
だらだらと冷や汗を流す乱馬。
「ありがと…?でもなんで…なんで、白や、赤じゃだめなの???」
そんな乱馬を前にして首を傾げるあかね。
「し、白は絶対ないからな!!赤は別にいいけど…ってあ〜〜、
俺、なに自らバラしてんだぁ〜〜!!!」
うなりながら、頭を抱え込んでしゃがみこむ乱馬にはお構いなく、
あかねの質問攻めが続く。
「なに、バラすって??なんで、赤や黄色はいいけど、白はだめなの!?
ねぇっ…乱馬!」
「う〜……知るか、んなもん……///」
「はぁ?あんた、自分で言ったことに責任持ちなさいよ、乱馬ぁ!!!」
「うるせーうるせーうるせーーー!!////////」
ふっ…乱馬くん墓穴掘ったわね。
これで、またゆするネタ…いえ、将来の義理の弟を守ってあげるためのネタが、できたわね。
ふふふ…。あら、こんなとこにカメラが。後で、花壇の前で撮ってあげましょうかね?
何も知らない可愛い妹の気をそらしてあげるために。
こっそり、いや、堂々と庭で繰り広げられている2人のやりとりを聞いていないものは、
この天道家の中にはいなかった。
「乱馬教えなさいったら!!」
「なんでもねーって言ってんだろ!しつけーなぁっ…!!////」
「じゃあ、なんで顔が赤いの?なんで黄色か赤じゃないけないか理由を教えなさいよ!」
「うぅっ……////」
「ねぇ、なびきちゃん。確かチューリップの花言葉って色によって違ったわよね?」
「えぇ……」
「なんだったかしら……?」
「それはね…
赤が、私を信じて、告白
白が、失恋
そして黄色が…
あなたの微笑みは日の光だ
…よ、お姉ちゃん。それを、言うわけにはいかないわよね?乱馬くん…」
ぞわぞわっ…
「…!?!?」
「どうしたの乱馬…?」
「い、いや、今急に寒気が……?」
「大丈夫……?」
「あ、ああ……よし、そろそろ中はいらねーか?」
「うん…あ、駄目よ!!聞いてないもの理由!」
「…しつけーぞ!///」
「あかね、乱馬く〜ん、写真撮ってあげるv」
「げっ、なびき……」
「お姉ちゃん!?」
「なによ、そのげっ…って言うのは!ほら、ただで撮ってあげるからv」
「「え……」」
「なに2人ともそんなに珍しい??…フィルム早く現像だしたいだーけ!
ほら、並んだ並んだ!」
「どうする乱馬…?」
「…いーんじゃねーの?撮ってもらおうぜ?//」
「え…う、うん!///」
きっと、乱馬は気づいたのだろう。
なびきの瞳の中にある怪しい微笑みを。
でも、乱馬にとっては、それを差し引いても良い助け舟になった。
「は〜い、撮るわよっ!」
少し距離を空けて普通に並ぶ2人。
「…ちょっと、2人とももっと近づいて。乱馬くん肩抱き寄せちゃいなさいよっ!!」
「ん、んなことできるかぁ〜〜!!!////////」
「そ、そうよお姉ちゃん!!/////////」
カメラのレンズ越しにみる2人は、顔真っ赤か。
「なんでもいいからもうちょっと近づいてくれないと入らないのよ!」
嘘ばっかり。完璧に入ってるんだけど、どーせ撮るならと、
変なところでカメラ魂がでてしまう。
「「……///////」」
その言葉が効いたのかそろそろと近づく2人。
「おまえもっとこっち来いよ!////」
「あんたが来ればいいじゃない!!////」
「…わーったよ!手貸せっ!」
「手?はい…きゃっ!!ら、乱馬?////」
右手を差し出すとぐいっと引っ張られた。
「これでいーんだろ!なびき早く撮れよ!!////」
「やるじゃない乱馬くん……はい、撮るわよー」
あ、手繋いだまま!!…いいの?と乱馬を見上げたけど、
なんにも言わずに前を見つめている。手を離す気配もない。
…そのままでいいってことかな?///
「あかね、撮るわよ!…はい、チーズ!」
カシャッ…
「はい、撮れたわよ?」
「2人ともいい顔してたわぁ」
「…だって。よかったね、乱馬…///」
「…そうだな//」
カシャカシャッ…
「「え…?」」
カシャッ…
「なびきっ、なにまだ撮ってやがる!!」
「なびきお姉ちゃん!//」
「だーって、まだフィルム残ってるんだもの!」
「もぉ〜、変な顔まで撮らないで!!///」
「…おい、あかね、逃げよーぜ!」
「えっ…きゃっ……」
返事をする間もなく抱きかかえられ上へ上へ飛び上がる。
一瞬で、春の風の匂いと乱馬の匂いが入り混じって良い匂いがする。
カシャッ…
…下の方で、シャッターの音が聞こえる。
なびきお姉ちゃんったらもー…
「あ、乱馬…さっきのは…?」
「まだ、言うかこの口は〜」
「だって、気になるもん〜〜」
「……黙んねーとキスすっぞ?//」
「☆■△!?なーに言ってんのよ!あんたにそんな勇気あるわけないでしょ?」
「…ば、ばかにしやがって、ほんとにするぞっ!!///」
「してみなさいよっ!ほらっ…」
乱馬にそんなことできないの分かっていながら、目を閉じて見せる。
「…っ…………覚えてろよ//」
「…へへ、勝ったv//」
「にゃろっ……おっ、あそこ桜咲いてるぜ?」
「ほんと?行きたいなぁー…」
ちらりと乱馬の顔を見上げて見る。
おっ、乱馬もこっちを見た。ふふっ、照れてる、照れてる。
「…りょーかい//」
さっきよりちょっとテンポが速くなった規則正しい足音。
それが、乱馬なりの照れ隠しなのか、急いでいるのかは、よく分からないけど…。
この春もまた思い出がたくさん増えそうだね、乱馬……
end
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