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「腕の中で」
日射しが暖かくなり、柔らかな空気が天道家の庭いっぱいに満たされている。
そんな庭に足を投げ出して縁側に座っていると、気持ちいい眠気が少しずつ、少しずつ
体を包み込んでくるようだった。
だけど、コレじゃあ眠れねえよ・・・。
自分の左側には気持ちよさそうに眠る少女。
よけるとコイツそのまま倒れるだろうしなあ。
さっきまで
「新学期になったんだし、授業についていけるように勉強しなさい!」とか
「遅刻しないように、しっかり毎日起きるのよっ」
って、俺に小言を言ってたクセに・・・。
心地よい陽気に誘われたのか、言葉数が少なくなってきたなと思っていると
フイにもたれてきたから驚いてしまった。
「あ、あかね??」
恐る恐る声をかけてみると無反応。
覗き込むと、瞳は閉じていて、あどけない寝顔で気持ちよさそうに眠っている。
・・・なんだ。ただの居眠りで俺は壁の役目か・・・。
しばらくそのまま動かずにいると、左側がほんのりと温かくてぽかぽかしてきた。
春の陽気のせい・・・じゃなくてあかねの温もりが伝わってくる。
ふと、左肩で揺れるサラサラな髪に目をやった。
芯が通っていてまっすぐな俺の髪みたいじゃなくて、風の向きに合わせてフワフワ、
ふわり、と楽しそうに静かに舞っている柔らかい髪だった。
スッと日射しが少し翳った。
ぶ厚い雲が太陽を隠してしまったようだ。
すると、さっきまで心地よかった風がほのかに寒い空気を運んでくる。
まだ春になりたてのこの時期は、気候がとても変わりやすい。
温かくなってきたと思ったら、急に寒さが戻ってくる。
しだいに温かさの方が長くなってきて、春が訪れたのがわかるんだ。
その時、ぶるるって震えるのが伝わってきた。
左側を見ると、身体をきゅっと縮ませて急にきた寒さに身を守ろうとしているあかね。
表情もさっきと違って、不安そうな、ちょっと泣きそうな顔になっている。
寒い・・・んだろうな、やっぱり・・・。
辺りを見回す。
誰もいない。
気配を探ってみる。
・・・よし、大丈夫だ。
そっと、左腕を後ろにずらして、そのままそぉっと伸ばしてみる。
・・・あかねはまだ眠ったまま。
伸ばした腕を今度はゆっくり、ゆっくりと動かしていくと
ちょうどあかねの腰あたりに触れた。
い、いや、触ろうとしたんじゃなくてだな〜・・・
あかねが寒そうだから仕方なく、触れる箇所が増えるとまだマシかなー?って・・・。
顔を真っ赤にしながら、ひとりつぶやく乱馬。
あかねに添えた左腕が熱を持っているのがわかる。
乱馬の腕がちょっと震えていた。
これは寒さではなく極度の緊張からのようだった。
すると、あかねは温もりを求めるかのように思いもよらず更に身を寄せてきた。
ドッドッドッド・・・・
げげっ、心臓の音が大きい!
あかねが起きちまうじゃねーかっ、落ち着け、いーから落ち着け俺!!
自分になんとか言い聞かせて、何度も何度も深呼吸。
ふー・・・と呼吸を整えた時
「・・・・・・う・・・・・・」
ぎくーーーーーーっ
一瞬、身体が固まった。
・・・・・・・・・。
おそるおそる、あかねの方をチラって見てみると、
彼女は起きてはいなかった。
ただ。
そう、ただ、さっきの不安そうな表情が更に泣きそうになっていた。
いやな夢でも見ているのか・・・?
そのまま見ていると、目に涙が潤んでいるように思えた。
右手をゆっくり近付けて、親指でそっと涙を拭ってやる。
すると、ぽろぽろと涙がこぼれおちてきた。
・・・さっきまでの緊張がウソみたいに消えていた。
変わりに左腕で力強くあかねを引き寄せて、右手で優しく髪をとかすように
ゆっくり、ゆっくりとなでてあげていた。

ぶ厚い雲が通り過ぎる。
天道家の庭に、温かな空気が戻ってきた。
冷たい風は過ぎ去り、ぬくもりを運んでくるそよ風が、ふんわりと乱馬達を包み込んだ。
日射しがぽかぽかと温かく感じた。
目を細めて見上げた太陽が優しく見える。
その時、腕の中で小さく身体を縮めていたあかねから力が抜けたようだった。
太陽からあかねに目を移すと不安で泣きそうだった表情は消えていた。
変わりに目を細めて眩しそうに乱馬を見上げ、とても幸せそうなあかねが
ちょっぴり恥ずかし気に乱馬の腕の中で微笑んでいた・・・。
end
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| かさねサマからのキリバンリクエスト「『俺のあかねになにしやがるんでいっ』と内心叫びながらあかねをしっかりと腕の中に納めている乱馬。」。あかねちゃんを悪い夢から守ってあげている乱馬くんですv どんな状況であれ、あかねちゃんの涙は乱馬くんを本心へと動かしてしまいますよね! 「手」が重要だったので、両手でしっかりとあかねちゃんを包み込んでおります(^^) |
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