【Strawberry on the short cake 〜R〜】
 

 

 

 いつもの帰り道。もう辺りは薄暗く星もでている。
本当はもう少し早く帰れるハズだった。一緒に帰るあかねの姿もない。
しつこい程まとわりつき、追いかけてくる3人娘からやっと逃れたのは、
夕食時だろうか。・・・は、腹が減った・・・。
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「乱馬っ、私とデートするよろし!ちょうど仕事も終わったところある!」
「嘘つけシャンプー、今から稼ぎ時やろ!うちは定休日やし、乱ちゃんは
これからうちと一緒に出掛けるんや!」
「いーえ!乱馬さま、私の庭には今桜が満開でございますの。盛大にお花見でも
ご一緒致しましょう!」
 学校帰り、あかねと門を出た辺りでいつものように3人娘に捕まってしまった。
3人が口々に好きな事を言って1歩も引かない。しかも俺に抱きついたり
引っ張ったりしてるもんだから、たまったもんじゃなかった。
俺が何を言っても3人で言い争いを続けている。
そんな3人にとまどっていると、低く冷た〜い声が聞こえてきた。
「・・・ふーん、いろんなお誘いを受けて悩んじゃうわねえ。
ま、あんたの好きにしたら?」
怒りの表情を押しとどめながら、静かに言い放つあかね。来るっと背を向けると
そのままスタスタと歩いていった。
「なっ、お、おいあかね!」
「乱馬〜、私と一緒に来るある〜!」
「シャンプーいいかげん離れや!乱ちゃん、行くで!」
「乱馬さま、今リムジンが迎えに来ますわ!」
「あー!もう、いいかげんにしてくれーっ!」
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 日常的な光景。もうあかねのヤキモチもいつもの事。・・・だけど最近、以前より
つっかかってこなくなった?まとわりつく3人を見ても、すぐその場を離れるって
いうか・・・。もしかして、ただあきれているだけなのか?
あかねは俺に甘えてはこない。 ハッキリ態度に出さない俺に原因があるかも知れ
ないけど、いつもの状態がしっくりくる気がして、俺も何も行動に出せなかった・・・。

「た、ただいま〜・・・。」
 やっとの事で帰りついた。結構疲労があったようで声にも力がでない。
ぐったりしながら玄関に入ると、先に帰っていたあかねが階段から降りてきていた。
俺を見ると、はぁっとため息をつく。
「だらしないわね〜。ぼろぼろじゃない!もうご飯なんだから早く居間に行きなさい!」
そう言うとすぐに台所へと姿を消した。
・・・なんだよ。好き好んで巻き込まれたんじゃねーのに。かわいくねー・・・。
だめだ。言い返す気力もねーや・・・。
空腹の為、声を出さず深いため息をつくと、よろめきながら居間へと行った。


 翌日の土曜日、休み時間にあかねが雑誌を見ながら何やらさゆり達と騒いでいた。
聞くつもりはないけど、何故かあかねの会話は聞こえるんだよな。
「あ、あかね!こっちのケーキの方がおいしそう!」
「え?どれどれ?う〜ん・・・、ちょっと難しそうじゃない?」
げ!お菓子作りの話しか??最近、いろいろと作っているあかね。
まあちょっとずつは上達しているかも知れないが、味の方は相変わらず
殺人的であることには違いなかった。
・・・まあ、一生懸命なのは知ってるから俺も意を決して食べるようには
してるけど、それはかなり勇気がいることだ。
 その話し声に知らないフリをしていたが、大介やひろしがニヤニヤしながら
絡んできやがった。
「うらやましいよな〜、乱馬くん。あかねはお前の為に作るんじゃねーのか?」
「ほんっと!かわいいエプロンつけてさ〜、一生懸命作ってくれるんだぜ〜?」
なっ!!
エプロン姿は確かに、に、似合ってるが、核心を突かれたようでアセってしまう。
「うるせえっ!おまえら食った事ねえからそんな気楽な事言えるんだ。
こっちの身にもなってみやがれ!だいたい、あかねが作ったものなんかな〜・・・」
ドカドカッ!
全部言い終わる前に机がいくつか飛んできていた。
「・・・あんたね〜、全部聞こえてるのよ!」
やっぱりかわいくねー・・・。


「え〜っと、生クリームでしょ?苺でしょ?もう買い忘れないわよねー?」
 ケーキの材料を買い揃え、楽しそうなあかね。この前のカップケーキは食ってから
次の日には回復できた。今回はどのくらいで回復できるんだろうか・・・。
「お前、ほんとに作れるのかー?スポンジとか難しいんじゃねーか?」
「うるさいわね!大丈夫よ、この本わかりやすく書いてるんだもん!」
 張り切るのはいいんだけど、本当にケーキの形になるのか心配だ。
ま、できてすぐ嬉しそうな表情を見るのも悪い気はしないけど・・・。
あかねの方をちらっと見ると、ケーキ作りに向けて真剣そのもの。
・・・今日の夜は寝込むのを覚悟しなきゃな・・・。


 チリリン。チリリン。
遠くから自転車がだんだん近付いてくる音が聞こえてきた・・・。

グシャッ!
聞こえた、と思ったと同時に踏みつぶされる。
「乱馬!偶然あるなーっ。これからピクニックでも行くよろし!」
 自転車の下敷きになった乱馬に嬉しそうに抱きつくシャンプー。
「こ、こら!いいかげんに自転車で人を踏むのはやめろ!」
「ほら、お弁当も2人分用意してきたある。このシュウマイは新作あるぞ!」
 またところ構わず抱きついてくる。離れろ!って言っても聞く耳もたない。
その時、すぐ傍で怒りのオーラを感じ取れた。
「シャンプーあんたねえ・・・、仕事はどうしたのよ!忙しいんじゃないの!?」
「店はひいばあちゃんが出掛けて臨時休業ある。
私はこれから乱馬とデートするから、あかねはもう帰るよろし!」
 シャンプーはいそいそと手持ちのバスケットの中からお箸を取り出し、
シュウマイを1つ取り出した。それを乱馬に向けると、
「ほらおいしいあるぞ!乱馬、口開けるよろし。あーん!」
パクッと乱馬の口にほおりこんだ。

げッ!!
味は確かにうまいが、それ以上に恐ろしさを感じる方が強かった。

「ああ、そう!!せっかくいい天気なんだからピクニックでもどこへでも
行ってくれば!!!私は今から忙しいから帰るわよ!」
案の定、あかねの怒りは頂点に達したという様子。
「ちょ、ちょっと待て!あかね!」
「あかねもああ言ってるある!乱馬、どこに出かけるあるか??」
俺の呼ぶ声にも振り向かず、スタスタ歩いていくあかね。・・・やっぱりすぐに
この場から離れていく。抱きついてくるシャンプーを引き剥がそうと
しながらあかねの歩いていった方向を見ると、もう姿は見えなくなっていた。

 以前から感じていたこの不安。今までなら怒りながらも俺の傍にいた。
・・・いるのが当たり前に思っていた。もうその状態に嫌気がさしたのかも
知れないが、そんなまさか・・・。
そんな考えを振り払おうとしても、一度考えだしたら止まらない。
そして、そうなる原因は自分に山程あるようにも思えた・・・。

「乱馬っ!何ボーっとしてるあるか?せっかく2人きりなのだから、
このままどこかへ出掛けるよろし!」
 シャンプーがグイグイと引っ張っていこうとする。
「お、おい!俺もう戻らねーと・・・。」
「何言ってるあるか!こんな天気に出かけない。もったいないあるっ。」
 このままじゃ、1日中つきあわされる気がする。
「あっ、シャンプー、俺ちょっと用事があって出掛けるんだ。今日は弁当食ってやる
からピクニックはあきらめろ。」
 もうバレバレの嘘。シャンプーが何かを言いかけたが、弁当さえ食ってやれば
多少は収まるだろうと思い、弁当を奪いガツガツと食べ始める。
その時、辺りに不穏な空気が漂ってきた。
「乱ちゃ〜ん、こんな道ばたで何弁当食べてるねん!ウチとこに来れば、
焼きたてのお好み焼きを作ったるで!!」
 右京が恨めし気に巨大なコテを構えて立っている。
「右京!邪魔するあるか!今乱馬は私の手料理を味わってるとこあるぞ!」
「もうそれだけ食べれば十分や!さ、乱ちゃんいっぱい食べさしたる!」
 2人の間に、だんだん闘気が高まってきているようだった。
よし!今このスキに・・・。
その場から離れようとした乱馬の目の前に、黒バラの花吹雪が舞い上がる。
「ほーほっほっほ!乱馬さま!お迎えに上がりましたわ!土曜の午後のひととき。
私と夢のようなデートを致しましょう!」
 小太刀の出現に2人の視線がこちらを向く。もう収集がつかない。
3人の争いに巻き込まれていく様子がもう見えていた・・・。


「や、やっと捲いた・・・。」
 もう夕方の5時近く。ずっと3人のいがみ合いにつき合わされていた。
3人だけの争いではあるが、乱馬中心である為に自分にも当然火の粉は
降りかかる。良牙相手のようにする訳にも行かない。だが格闘においては
彼女達も相当の強者。毎回のようにぼろぼろになりながら家に戻って来た。
・・・すると前方から親父達があわてて走ってくるのが見えた。
「おぉっ、乱馬!帰ってきたか!ちょうどよかった!」
「乱馬く〜ん、君がいないとあかねが寂しがってるよお!」

ドキッ!
あ、あかねが寂しがってる??

 感情が顔に出るのを抑えて、親父達の様子をみた。
おじさんは財布だけひっつかみ、親父と共に急いで出てきたようだった。
「・・・2人してどっか出掛けるのか?」
「わし達はこれから飲みに行ってくる。何、夕食の頃には帰ってくるが
お前はまっすぐ家に帰っておれ。」
「そうそう、あかねも何やら作っていたようだしねえ。今あの子1人だけ
だから一緒に居てやっておくれ。」
・・・なるほど、あかねのケーキから逃げてきたって訳だな。
 そそくさと出掛けていく親父達。
・・・ったく、娘の料理から逃げやがって。また犠牲になるのは俺だけ
なんじゃねーか。でもまあ覚悟はしてるしな・・・。
そうは思ってもやはり足取りは重く、体を引きずるようにして家へと入っていった。
シーン・・・。
台所の方には人の気配はない。もう作り終わった後みたいだな。
とりあえず体を休ませたい。玄関を出て庭の方から直接居間へと向かった。


ん?縁側に誰かいる??
 見るとあかねがPちゃんを膝に座らせて頭をなでている。
・・・良牙のやつ、また帰ってきてたのか・・・。
 あかねは嬉しそうな顔をして、なにやらPちゃんに話しかけていた。
そういえば、ここのところ怒っているあかねしか見ていなかった気がする。
料理を食べてやる時ぐらいしかそんな顔を見れていない。だけど、俺が寝込むと
その表情も心配顔に変わってしまっていた。
そんなつらそうなあかねが見たいんじゃない。いつだってあかねには笑っていて
欲しいから、俺だけは食ってやってたんだ。
・・・なのに最近は怒らせてばかりいる自分が歯がゆくて、今嬉しそうな顔を
しているあかねのところへは行けなかった。

 庭の端で立ち止まり、あかねの様子をしばらく見ていた。
するとあかねは、横に置いていた手作りと思われるケーキの一切れにフォークをさし、
小さくしてPちゃんに近付けた。

え?

「きっとおいしいわよ。Pちゃん、はい、あーんして!」
そう言ってPちゃんの口へとケーキを運んだ。

っ!!

 ・・・今見た光景。
ただ、あかねが豚に食べさせてやっただけ・・・。
だけど、あれはただの豚じゃない。
あかねはそんなことは知らずに、かわいがっているが・・・。
俺に対してはしない事を、良牙にはしてる・・・?

・・・な、何?
・・・何だよ、この感情。
なんでものすごいショック受けてんだ。
たかだか豚に食わせただけじゃねえか!

 何故だか心臓をわし掴みされたようで、その場から動けなかった・・・。
豚に嫉妬してるなんて思いたくもないし、認めたくもない。
だけど、今まで感じていた不安が蘇る。
あかねは俺に甘えてこない。
ただの許嫁だから?俺の態度に嫌気がさしたから?
答えなんて聞けばいい。・・・だけど俺に聞けるハズがない。
Pちゃんを抱くあかねの姿をじっと見ているのも限界がきた。

「・・・こら、何食べさせてんだ・・・。」

 あかねは顔をあげ、俺を見た。驚いた顔をしている。
「何って・・・、私が作ったケーキよ・・・。ちゃんと作れたからPちゃんに
食べさせてあげただけじゃない。」

 小さな声でつぶやくように話す。腕の中にはしっかりと豚を抱きしめたまま。
・・・いつも見慣れている光景だが、今は早く引き剥がしたかった・・・。
つかつかと歩いていき、あかねからPちゃんを両手でバッと取り上げる。
するといきなりPちゃんは「ピーーーッ!」と鳴くと俺の両手をガブガブッと
噛みつき、離された途端あわてふためきながら走り去っていった。
・・・たったひと口のケーキでやられたか。

 あかねはPちゃんの走っていった方向に目を向けている。
さっき噛まれた両手をさすりながら、そんなあかねを見てため息がでた。
まったく・・・、あいつに心配そうな顔してんじゃねーよ・・・。
あかねの横に座ると、俺の方に視線を移した。
「・・・なによ。シャンプーのおいしいお弁当食べたんでしょ?なのに
なんでそんなに機嫌悪いのよ。」
気づけよ・・・っていうのは無理な話。あかねは鈍感だしな。
変わりに別の答えを言った。
「・・・しつこいから、食べてやっただけだ。その後また2人来てさっきまで
捲くの大変だったんだからな。」
「だから機嫌悪いの?自業自得じゃない!私は・・・、無理にケーキあげないわよ。
後でみんなにあげるんだから・・・。」
 うつむきながら、そうつぶやく。
怒ってはいるが、その姿は落ち込んでいるようにも見えた。

・・・俺がキズつけたのか?
 あかねの話す声がとても寂しそうに感じた。
ケーキを作っている間、俺が他の3人といたから?
すぐに帰ってこなかったから・・・?
あかねをちらっと見ると、唇の傍に小さな生クリームがついていた。
それに気が付かないぐらいに、一生懸命に作ってたのか・・・。

 静かに手を伸ばし、あかねの顔に触れる。あかねはハッと顔を上げたが、
構わず指で唇の辺りをなぞった。

 あかねはびっくりした様子で俺をじっと見つめる。
・・・え?俺、何かした?
ただあかねについていた生クリームを指でとっただけ・・・

って、く、唇にふ、触れたっ・・・、って、たかだか指じゃねーかっ!!

 そのままあかねに指を見せ、動揺する気持ちをなるべく抑えて言った。
「・・・ずっとついてたぞ。ガキか、お前は。」
 すると、途端に顔を赤くしてパッと目をそらした。
びっくりして恥ずかしそうにするあかね。もじもじとしながら
その瞳は潤ませているよう・・・。

かっ、かわいい・・・かもっ・・・。

「ちょ、ちょっと取り忘れてただけじゃない!ほら、これで指を拭いてっ!」
真っ赤な顔のまま、いそいそとハンカチをポケットから取って俺に差し出す。

・・・なんだかハンカチで拭き取ってしまうのも、もったいない気がした。
一生懸命に作っている姿が想像できる。きっと、辺りに材料を飛ばしながら
必死に作っていたんだろうな・・・。
 あかねを見ると、イタズラを見つけられてスネている小さな女の子のよう。
そんな表情がかわいらしくて、ハンカチは受け取らずに指の生クリームを
ペロッとなめてしまった。

 するとあかねは更にボッ!と顔を赤らめて、何も言わずにうつむいてしまった。
どこを見ているのかわからないが、少し震えながら恥ずかしそうに下を
向いている。そんな横顔見ていたら、こっちまで移ってきたようだ・・・。

 なんだかあかねが見れない。
たぶん、俺も赤くなってるかも知れない。
生クリーム舐めたのって、そんなにまで照れる事なのか?
・・・って、た、確かに照れるかも・・・っ。
自分のした行動に、今さらながらにうろたえながら気持ちを落ち着けて言葉に出す。

「・・・生クリームはまあまあだな。ちゃんと出来たのか?食ってやるから出せよ。」
「だっ、だから無理にあげたりしないって言ってるじゃない!」
「無理にじゃねーよ!俺以外に誰がお前の作ったもん食うんだよ!
ブタにやったって味がちゃんとわからねーだろ!!」
 あかねは不安気な表情で俺を見ている。
そんな表情を消してやりたくて、必死に言葉を探す。
「普段食ってる俺にしか、ちゃんと上達してるかわからないだろ・・・。」
 上手くは言えない。だけど、あかねの頑張りを俺は知っている。
勇気はいるが、食べてやらないとあかねはきっと悲しい顔のままだ・・・。

 あかねは考えているようだが、意を決したようだ。
「・・・はい。またお腹壊しても知らないわよ・・・。」
 恐る恐るケーキを切り分けて、俺に差し出してきた。
この時、受け取ろうとして両手の痛みを思い出す。
・・・さっき良牙に噛まれたキズ・・・。別になんともない痛みだが、
ふと考え付く。普段の俺なら絶対といっていい程こんな事は言わねえ。
だけど、いつまでも態度に出さなくていいのか?
さっきあかねに聞きたかった事。
聞けないのはわかっているから、先に進めない。
・・・なら少し、ほんのちょっとだけ進めるために・・・。
「やっぱり、いらないの?」
 なかなか受け取らない俺にシビれを切らして、聞いてきた。
誰もいない。今しかこんな事できない。
思いきって勇気を振り絞って、言った。
「・・・さっき、Pちゃんに両手かまれてフォーク持てねーの。だから・・・。」

 俺、きっと緊張した顔してる。
いや、きっと真っ赤になってると思う。
言いたい事わかったかな?・・・こいつ鈍感だから気付いてないかも。
だけど、あかねは手に持ってるケーキを震える手でゆっくりと切り分けて
ひと口サイズにしていった。
それを刺して、少しずつ俺に食べさせてくれた・・・。

 心臓の音が聞こえそうだった。
こんな事でドキドキしているなんて、あかねに言えない。
ずっとずっと、黙ったままで何も話さない2人。周りから見たら変かも知れねえ。
ひと口ずつ切っては食べさせてくれる。もう味なんかどうでもいいや・・・。

 緊張のあまり、どれだけ食ったかわからなかった。
食べさせてくれるだけお腹に入れた。見ると半分も食ってしまっていた・・。
あかねは心配そうに俺を見ている。ここで気分が悪いと言うと悲しい顔になるかも。
「前に食ったやつより、ちょっとはマシじゃねーの?少しずつ食えるもんに
なってるよ・・・。」
今はこれが精一杯の言葉。本当の事を言えばさっきの良牙がいい証拠だ。
だけど、まだ俺には耐えられる味だから大丈夫・・・と思う。

あかねはおずおずとしながら、うつむいたまま話しにくそうに言った。

「あの・・・、また作ってみたいから、・・・今度も食べてくれる?」

・・・驚いた。
こんな風に遠慮がちにお願いされた事なんてあったっけ?
いつでもほとんど無理矢理状態で食べさせられる事が多かったのに。
俺の体調を気遣うあかねがなんだか愛しくて、何も言えずにただ見つめていた。
すると不安になったのか、そろそろ顔を上げて俺の方へちらっと見上げてきた。
そんな表情を消してやりたい・・・。そう思うと自然に言葉が出た。

「・・・がんばれよ。」

ただその一言で、とても嬉しそうに目を輝かせるあかね。
どんな料理だって、きっともう平気だ。
その顔を見れるなら、たとえまた倒れてもいくらだって食べれる気がした。


・・・い、いや、やっぱりちょっとムリかも知れない。
痛む腹を押さえながら、部屋でうずくまる。
一切れでもきっと倒れる味なのに、半分も食べてしまったから回復するのも
結構時間かかるかも。

体だけじゃなく、腹ん中も鍛えとく必要があるな。
・・・まあ、あの笑顔と引き換えなら、耐えられるぜ・・・。
たぶんな・・・。




end

あかねちゃん視点のお話を書いた後に、こちらも作ってみました。両方の視点ものって初めて書いてみたんですが、同じ話でも視点が変われば別話なのね〜。という事がわかりました。ささいな事で照れてしまう乱馬くんですね。もう1歩進みたいっていうもどかしい状況は結構すきvv思ったとおり時間かかっちゃったけど、楽しんで書けたデス。
よろしかったら、あかねちゃんの方もどうぞっ 
<あかね視点>

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