| 【ハチマキ】 |
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「パン、パーン!」
秋がくると学校ではいろんなイベントが催されるように、ここ風林館高校でも
今日体育祭が行われていた。
「乱馬ー!ぶっちぎれー!!」
短距離走を独走する乱馬にクラスメートから、応援の声があがる。
2年F組と進級した乱馬とあかねのクラスが優勝にほぼ近く、応援にも熱が入っていた。
「すごいなあ、やっぱり乱馬くんって運動神経いいわね。惚れ直しちゃったんじゃない?」
さゆりのほめ言葉にも無関心をよそおうあかね。
「・・・ただの運動バカなだけよ。」
疲れも見せず一位となった乱馬が戻ってくると、右京が笑顔でタオルを差し出していた。
許嫁としてかいがいしく世話をする右京に、乱馬に近寄りたい後輩達も遠巻きに
見ているようだ。あかねもそ知らぬ顔で、さゆりやゆか達とおしゃべりを楽しんでいる。
「なあ、乱ちゃん!体育祭終わったら乱ちゃんのハチマキ、ウチにちょうだいな!」
「あ〜?ハチマキ?・・・どうするんだよ?こんなもん。」
「いーから、約束してや!」
何やら真剣な顔で頼んでくる右京にただならぬ気迫を感じ、
「まあ、別にいいけど・・・。」
と言うと「絶対やで!」と念を押されて乱馬は訳が分らなかった。
「は〜、右京ちゃんも乙女心なんだねえ〜。」
乱馬の肩をポンとたたき、悪友のひろしと大介がうなずきあっている。
「まあ、これだけ活躍してたら後輩とかにせがまれるかも知れねーもんな。
先に予約しておきたくなるのも分るねえ。」
「???」
何を言ってるのか見当もつかず、首をかしげる乱馬。
そんな乱馬の様子に2人、しばし沈黙。
「・・・お前もしかして知らねーの?」
「何が?」
「・・・はあ〜、こんだけモテても恋愛オンチっつーのも腹が立つな!」
ぐいっと、大介は首に腕を巻き付け力を入れる。ひろしは乱馬の頭をポンポンとたたいた。
「お、おい、苦しいだろ! まったく・・・、一体何なんだよ!」
「イベントの時と言えばよくあるだろー?『あこがれのあの人に告白するチャンス!』
とかよ!体育祭なら好きな奴にコクってOKならハチマキもらったりするんだよ。」
「結構、お前が競技に出てる時に応援する女の子もいるからなあ。体育祭の後とかに
『ハチマキ下さい』って言ってくる子もいるかも知れねーぞ!」
普段から告白される事もある乱馬だが、どの子にも断ってきていたのでそういうイベントには
あまり関心を示さなかった。
「・・・そんなもん俺には関係ねーよ。」
「ほー、俺らはてっきり、あかねにやるもんだと思ってたけどな!」
「なっ!なんで俺があんなかわいくねー女に・・・!」
「そーやって、ムキになるところが素直じゃないんだよなあ。」
「ほんと、ほんと!『あかねは俺のもんだ』って態度しておかねーと、横取りされちまうぞ!」
「へっ!あんな凶暴女どこがいーんだか・・・」
「ふーん、でも乱馬くん、あかねからハチマキもらう約束してるんでしょ?」
「なっ??」
いきなり会話に加わった人物に振り返ると、なびきがニヤリと微笑みながら立っていた。
「他の男にハチマキが渡るのを許嫁として見ていられないものね〜。」
冷やかすように言うなびきに「やっぱり」とうなずく大介とひろし。
「し、知らねーよ!そんなデマカセ言ってんじゃねー!」
赤くなりながら否定する乱馬を見て、「おや?」と考えるなびき。
「・・・あら、あかねのハチマキ高く売れるからもらおうと思ったんだけど
『あげる約束をしてるから・・・』って言われて、てっきり・・・。
ふ〜ん、乱馬くんにじゃなかったのね・・・。」
「・・・へ?」
キョトンとする乱馬を残して、なびきはさっさと自分のクラスに戻っていった。
そばで大介とひろしがタメ息をついて、ボソボソと話す。
「もう、横取りされてるのかもな・・・。」
競技も最終種目の混合リレーを残すところとなり、一層の盛り上がりを見せる。
乱馬が出ると優勝間違いなしなのだが、すでに出場できる数の競技には出尽くしていたので、
あとはのんびりと見ているだけだった。
混合リレーのアンカーには、女子の中でもとびきり早いあかねが選ばれている。
「あかね!混合だけど男子にも負けないでね!」
「うん、まかしといて。がんばってくるわ!」
クラスのみんなの応援に笑顔でこたえ、集合場所に向かうあかね。
その様子を見ていた乱馬は別の事を考えていた。
(・・・最近あいつの様子が変わった事なんてなかったよな? あいつに告白する奴なんて
今はいねえと思ったけど。・・・でも後輩とかは俺らが許嫁って事知らねーやつらもまだ
いたんだっけ。)
小柄でスタイルもよく、成績優秀で運動神経抜群。責任感もあって面倒見もいいが、なにより
愛らしい表情で振る舞う彼女に心奪われる者も少なくなかった。
他校生さえもあかねにちょっかい出してくる者もいるのだ。学校内であかねをよく見かけて
いる奴らの中で、自分の知らない内に告白している者もいるだろう。
その内の誰かが・・・。
「あっ、そろそろ始まるわ!」
さゆりやゆか、クラスメートが見守る中スタートラインに並ぶ第一走者。
緊張のするなか、静まり返るグランド。
「よーい・・・」
パーン!!
ピストルの合図で一斉に走り出した。固まりとなってコーナーを曲がるが次第に散らばりを
みせてくる。あかねのF組は3位。第2走者にバトンがわたり2位に引き離されることなく
第3走者へ。だがランナーの間が少しずつ拡がってきていた。
「がんばれー!」
クラスの応援を受けて、各チームとも必死に走り抜いている。
アンカーのあかねは軽く体をほぐして、スタートラインへ立った。
「あかね!ファイトー!」
さゆりやゆかも手を振り上げて必死。その声を受けてあかねにバトンが渡る。
と、同時に猛然と走り出し、2位に追い付いたかと思うとさっと抜き去っていった。
「きゃー!がんばれ、F組ー!」
「あかね、あと一人抜いたらトップよ!」
じょじょにトップとの差を縮めるあかね。
もうすぐ抜ける・・・!と思ったその時。
「天道あかねーー!僕のためにそこまでがんばるとは!!今すぐに交際だぁーー!!!」
「く、九能先輩!?」
横からいきなり飛び出してきた九能が、走っているあかねに『ひしっ!』と抱きついた。
驚いたのはあかねももちろんだが、見ていたクラスメート達。
あかねの体制が傾き、転ぶ!と思われたが、あかねの反射神経が先に動いた。
さっと地面に左手をつき体を回転させると、
「今は忙しいんですーーーー!」
勢いよく九能を遥かかなたへ蹴り飛ばし、着地した瞬間にはもう走り出していた。
「は〜、トップまであと少しだったのに・・・。」
猛ダッシュしてみたが、結果は2位でゴールだった。
だが、九能の妨害があったにもかかわらず、その順位にクラスメートも喜んでいる。
「すごいじゃない、あかね!またファンが増えるんじゃないの?」
「さすが運動神経いいわね!なんだか、かっこよかったわよー!」
みんながあかねを取り巻いている中、乱馬は押し黙りあかねの様子を観察しているようだった。
そんなあかね達から離れて、じっと遠巻きに見ている一年生の女の子達がいた。
あかねはその子達に気付いて、クラスメートに「ちょっとごめん」と断ると、その後輩達が
いるところへ近付いていく。
「はい、これ約束だったわね。」
くくっていたハチマキを右手でほどき、笑顔で後輩に渡すあかね。
「あ、ありがとうございますっ!本当に頂けるなんて・・・嬉しいっ!」
目を輝かせあかねにたくさんのお礼を言うと、キャーキャーと騒ぎながら走って行った。
「女の子にあげる約束してたの?あかね。」
走り去る後輩を見ながらさゆりが聞いてきた。
「うん。委員会で一緒になった後輩なのよ。この前言われてたから・・・。」
「あかね、女子の後輩にも人気あるから。」
ゆかの言葉に苦笑しながら歩き出すあかねそばに、いつのまにか乱馬が立っていた。
「なによ。どうかしたの?」
あかねをじーっと見ていたと思うと、は〜っ、とため息ついてあかねの左手を取る。
「きゃっ!な、何するのよ!」
「・・・ドジ。そうとう痛めてんだろ?まったく・・・。こういう事はすぐに言えよ。」
見ると、左手が少し腫れている。みんなに分らないようにしていたつもりだったが、
乱馬に隠す事は無理だったようだ。
「ちょっと、あかね。あの時にケガしたの?」
「早く保健室に行きなよ。」
「おい、天道がケガしてるぞー!」
集まってくるみんなに、あかねは平気な顔をする。
「や、やだなー。少しひねっただけだよー。」
笑いながらこたえているが、ジンジンとする痛みを感じていた。
心配気に言うクラスメート達の中、あかねの左手を取って見ていた乱馬が、すっと自分の
ハチマキに手をのばす。
シュルシュルっと取ったかと思うと、あかねの左手首を固定するようにくくった。
「よし、こんなもんだろ。帰りに東風先生んとこ寄って帰るからな。
・・・ほどくなよ。それまで動かさねえようにしとけ。」
それだけ言うと、両手を頭の後ろに組み、何事もなかったかのように歩いていった。
「・・・やっぱり、乱馬くんてあかねの事ちゃんと見てるのね。」
「は?な、何言ってるのよ、さゆり。」
さゆりの言葉に動揺しながら、顔は少し赤くなっている。
「だってさー、あかねが左手首を傷めてたなんて気付いたの乱馬くんだけじゃない。」
「ほんとよね。それに固定するなら何も自分のハチマキじゃなくってもよかったのにねー。
あれじゃ、『こいつは俺の彼女』って言ってるようなものじゃない。」
「な、そ、そんなんじゃ・・・。きっと、たまたまよっ。」
向こうでは、「約束やったのに!」と怒る右京からあわてて乱馬が逃げている。
「・・・きっと乱馬くん、あかね以外の人には、あげたくなかったのかもね。」
ゆかの言葉に少し赤くなりながらも、左手首のハチマキを見てあかねは少し嬉しそうに
笑っていた。
東風先生の治療も受けて、左手にはシップと包帯が巻かれていた。
「・・・ね、乱馬。このハチマキもう取っちゃったけど、どうする?」
小さく折り畳んだハチマキを右手に持って、乱馬に見せる。
フェンスの上をあかねより少し先に歩いていた乱馬は立ち止まり、顔だけあかねの方に
振り返る。
「もう、体育祭も終わったし・・・俺には使い道ねーよ。」
ぷいっと顔を背けると、もごもごと口ごもりながら小さな声で言った。
「・・・あかねにやるよ・・・。」
こんな事にも照れてしまう許嫁に、ちょっと可笑しくて楽しくて。
綺麗な夕焼けの中、背を向けている乱馬の表情は見えないけれど、なんだか自分を包み込んで
くれる優しさがある。その雰囲気はあかねが一番安心していられる場所かも知れない。
体育祭に優勝して賞状をもらう事よりも、このハチマキの方があかねにとって嬉しく感じられた。
「ありがと、乱馬。・・・私のも欲しかった?」
「べ、別に!」
end |
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は、発掘してしまったっ(汗) このお話はHP開設時に書いたものでして、時期外れだし置いとこ。と思ってそのままだったんです。ちょうど今は秋なので読み直してみたのだけど・・・、もう修正しまくりっ(><) もう少し手直ししたいのだけど、もはやどうすればいいのか分からないので、これでUPしちゃおう! ひぃ〜
私が中学生の頃、クラスごとに色の違うハチマキをつけてて、好きな人にもらいに行こう!というのがあったんです。それを思い出して書いたのだけど、もらう時のあのドキドキったら!一生大切に持っておこうvと思ってたクセに、いつの間にかなくなっちゃったよ〜。思い出だけ残ればいいや。(と、なくした自分に言い聞かせる。) |
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